平成29年2月21日より翌22日まで、臨済宗妙心寺派大本山 妙心寺様への拝登と、道元禅師ゆかりの地の巡拝の研修を行いました。
道中の車内では青年会員 山守隆弘師がこの1年間、曹洞宗布教師養成所で学んだことを布教実演として話され、研修に参加しています青年僧からの講評をいただきくことで、互いの研鑽を積ませていただきました。

その後、比叡山延暦寺横川中堂にあります、道元禅師得度の地を拝登させていただき、法要を上げさせていただきました。
おりしも雪の降りしきる中の拝登となりましたが、奇縁にも前日20日は大本山永平寺に修行に入る若い僧侶が一番最初に到着した日とのこと。
研修参加者も雪道を進み道元禅師得度の地を目指しつつ、自分たちが永平寺へ到着した日を思い出したことではないでしょうか。
「お坊さん」になること。そのことを今一度よく思い出しなさいと道元禅師よりお励ましをいただいているかのようでした。


雪の比叡山を後にし、今回の研修の大きな目的地である臨済宗妙心寺派大本山妙心寺様を拝登させていただきました。
妙心寺様では最初に開山堂に当たります微笑菴にてお経をあげさせていただきました。
その後、隣接します玉鳳禅宮にて妙心寺様の縁起を聞かせていただきました。政治的に不安定にな時代、時の上皇である花園上皇が仏道を学ばれながら、臨済禅とどのように結びついていたのかを教えていただきました。
また、微笑菴の前面の門に応仁の乱の際についたとされる矢の痕跡や、後ろ手にあります武田家、織田家、墓所、豊臣家ゆかりの供養廟の説明をいただき、鎌倉の時代から連綿と続く時間の流れを感じました。
その後、東海菴の参拝をさせていただきました。この寺院は、曹洞宗でいう管主禅師が住まわれる建物に相当する場所であり、臨済宗妙心寺派の僧侶の方々にとっても非常に特別な場所であると伺いました。
また、東海菴では、枯山水で作られた庭園を見せていただき、そこに表現された宇宙と悟りの世界の一端に触れるとても貴重な機会をいただきました。



妙心寺様から会場を花園大学に移し、大学内の座禅堂にて臨済禅の体験をさせていただきました。
普段我々が行っている坐禅とは様々な点が異なっており、多くの驚きと発見がありました。
曹洞宗の坐禅では、普通壁に向かって座る「面壁」を行っておりますが、臨済宗の坐禅では互いに向かい合って「対面」しながら坐ります。また、坐禅を組むまでに至る作法にも多くの違いがあり、禅の世界の多様性を肌で感じることができました。
坐禅といえば最初に思い浮かぶであろう「警策」これも字は同じでも曹洞宗が「きょうさく」と呼ぶのに対し、臨済宗では「けいさく」呼ぶなどの他、その打ち方、受け方も大きく違い一同大きな驚きに包まれました。

坐禅の後、花園大学の教室に会場を移しまして、花園大学教授も務められます、安永祖堂師家老大師よる臨済禅の公案体系についての講演をいただきました。
臨済宗で用いられる「公案」いわゆる「禅問答」とは何のために作られたのか。そこに至るまでにどのような歩みがあったのか歴史を交えつつ、禅の深みを目指すために古来より僧侶がどのような想いを伝えられたのか教えていただきました。
特に、曹洞宗は「威儀即仏法」「修証一如」を説き、修行をする姿が佛そのもので、その佛であるためにどう生きていくかが曹洞宗の教えであるのに対し、佛に至るためにどのように考えて行動していけばよいかを公案を通して考え続けることが臨済禅である。などそれぞれの坐禅を比べつつ教えていただきました。
特に、佛である円をいかに維持し続けるのが曹洞宗であるのに対し、四角から五角、五角から六角と徐々に角を増やしていって円に近付くことが臨済宗であるというお話が印象に残りました。

研修2日目は最初、道元禅師示寂の地を訪ねました。昨日の寒波と曇天が嘘のような快晴に恵まれての参拝となりました。
京都市内の住宅地を歩いていますと、突然道元禅師示寂の地が現れます。まるでその場所だけが街の喧騒から切り取られたかのようでした。

その後、建仁寺さまへと拝登をさせていただきました。建仁寺さまでは開山堂にて建仁寺さまのご開山さまである栄西禅師へのご供養をさせていただきました。引き続いて明全さまへのご供養をさせていただきました。明全さまは、道元禅師に禅の道を進むことを示され、ともに宋へと渡られました。
ご供養の後、建仁寺さまの諸堂を参拝させていただき、臨済宗に伝わる文化と、そこにまさに融合した日本の歴史を感じました。

建仁寺さまを後にした私たちは、道元禅師の荼毘の地へと参拝させていただきました。京都嵐山の清水寺にほど近い地に道元禅師の荼毘の地がございます。私達が到着しますと、傍らの紅梅が見事な花を咲かせていました。道元禅師は梅の花をこよなく愛されておりました。比叡山では雪降る中、厳しくお迎えをしていただき、この荼毘の地で暖かな日差しと梅の花。まさに道元禅師が私達へと仏道を伝えてくださったのでした。

今回の研修では、得度の地である比叡山から、京都市内に点在する道元禅師の足跡を参拝し、荼毘の地へと至ったとき、道元禅師から私たちへと連綿と続く仏道の流れを感じ入りました。
今回の一泊二日の研修では、普段なかなか交流する機会のない臨済宗の方々と様々な意見の交換もおこなうことができ、参加者一同今後の弁道精進への大きな力となりました。
―3月18日追記―
平成29年3月1日付の文化時報2面に今回の研修に関する記事が掲載されました。
「お坊さん」とは何か。宗派を超えて求められる時代となってきております。
それぞれが大切にすることをより学んでいきたいと考えております。